熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違いとは?
2018.6.7
まずはじめにプラスチックとはなんでしょうか。
- ・製品の軽量化が可能(金属に比べて比重が軽い)
- ・電気を通さない性質をもつ
- ・成形により複雑な形状を安価に製作することが出来る
- ・染料調整で好みの色にできる
- ・添加物を追加することで、多様な機能を持たせることができる
などを理由に、さまざまな製品に使用され、普及しています。
食品トレー、ペットボトル、めがね、パソコンなど身の回りのあらゆる製品にプラスチックは使用されています。
またプラスチックといっても、その成分によって非常にたくさんの種類があります。
私たちが生活を通して使っているプラスチックは大きく「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に分類することができます。
私たちが生活している中で使っている樹脂は「熱可塑性樹脂」が大半をしめていますが、宇宙・航空事業の分野では「熱硬化性樹脂」もクローズアップされつつあります。
本記事ではそれぞれの樹脂の特徴について解説をします。
熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)とは?
熱可塑性樹脂は加熱すると溶け、冷えると硬化します。
再度加熱すると溶けるので、リサイクルすることが可能です。
汎用的に使われており、私たちが使うプラスチックの大半は熱可塑性樹脂です。
成形方法
あらかじめ化学反応をさせ、高分子化した材料を溶融し方に入れて成形を行います。
冷えて硬化すれば完成なので、成形サイクルが短く低コストで製作が可能です。
しかし急激に冷やすと収縮の問題で、一部がへこんだり(ひけ)するので適切な成形条件で製作することが大切です。
結晶性と非結晶性
熱可塑性樹脂はその構造から「結晶性」「非結晶性」に分類することができます。
樹脂は長細い高分子が集まって構成されます。
この高分子が一部でも規則正しく並ぶ領域がある樹脂を結晶性樹脂とよび、すべてが不規則に並ぶ樹脂を非結晶性樹脂とよびます。
結晶性樹脂と非結晶性樹脂の主な特徴と身近な例を下表にまとめます。
結晶性樹脂 | 非結晶性樹脂 | |
---|---|---|
寸法精度 | × | 〇 |
耐薬品性 | 〇 | × |
接着性 | × | 〇 |
透明性 | × | 〇 |
温度特性 | ガラス転移温度 融点 | ガラス転移温度 |
身近な例 | PE、PP(洗剤容器など) PET(ペットボトル) | PC(CD) PS(TVフレーム) |
寸法精度の良し悪し
寸法精度を決める大きな要素として成形収縮率があげられます。
熱可塑性樹脂は、成形時に冷えて硬化しますが、硬化する際に収縮します。
その収縮する割合が樹脂によって異なります。
結晶性樹脂は、1~4%に対し、非結晶性樹脂は0.2~0.7%と小さくなっています。
透明性
結晶性樹脂は屈折率(光の曲がり具合)が異なる結晶部と非結晶部がまざりあっているため、不透明になります。
しかし、結晶化する温度付近で急に温度を下げると、結晶化できずに硬化します。
それによって非結晶に似た構造となり、透明を保つことがあります。
この方法を利用しているのがペットボトルです。
温度特性
温度特性で注目すべきは、ガラス転移温度と融点という2つの温度があることです。
非結晶部が流動的になる温度をガラス転移温度、結晶部が流動的になる温度を融点といいます。
扱う上で、非結晶性樹脂はガラス転移温度に注意するだけでよいですが、
結晶性樹脂はガラス転移温度と融点の両方に注意しなければならない点です。
たとえば、結晶性樹脂であるPP(ポリプロピレン)は融点が165℃です。
ガラス転移温度が-20~0℃です。熱くしすぎるのはだめという認識はありますが、低温側も注意が必要です。
熱硬化性樹脂(ねつこうかせいじゅし)とは?
熱硬化性樹脂は加熱すると溶けます。
さらに加熱すると化学反応を起こして架橋構造となり硬化します。
一度硬化させてしまうと加熱しても溶けなくなるのでリサイクルすることはできません。
また、化学結合でくっついているため、下記のような特徴をもっています。
- 〇長期的に安定している
- 〇機械強度が強い
- 〇耐熱性がよい
- ×硬い反面、もろい(衝撃に弱い)
一時は熱可塑性樹脂に主役の場を奪われていた熱硬化性樹脂ですが、
最近ははやりのCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics;カーボン炭素繊維)などでその陣地を取り戻しつつあります。
CFRPは軽量ながら金属に負けない強度を誇り、飛行機やレーシングカーにも使われています。
成形方法
高分子化する前の材料を型に入れ、高温で化学反応をさせながら高分子化および架橋させて硬化させます。
化学反応が終わるまでまたなければいけないので成形サイクルは長くなってしまい、熱可塑性樹脂に比べて高価になってしまうのが現状です。
用途
不飽和ポリエステル樹脂:自動車部材など(FRP、CRRPとして)
ビニルエステル樹脂:化学工場の排煙ダクトなど
エポキシ樹脂、フェノール樹脂:電子機器の基板など